地球環境
HOME > 窒素・リン除去の仕組み

窒素・リン除去の仕組み

窒素除去の仕組み(Z社の例)

 窒素は、微生物の働きを利用した硝化液循環方式で除去します。

@加水分解

 浄化槽に流入する窒素は、タンパク質やアミノ酸などの有機態窒素がほとんどです。これらの有機態窒素は、すぐに加水分解されてアンモニア性窒素(NH4-N)に変化します。

A生物学的硝化(生物ろ過槽)

 アンモニア性窒素は、担体流動生物ろ過槽で硝化菌の生物酸化により、亜硝酸性窒素(NO2-N)や硝酸性窒素(NO3-N)に酸化されます。

B硝化液循環

 亜硝酸性窒素や硝酸性窒素は、処理水槽から循環用エアリフトポンプにより、嫌気ろ床槽へ移送されます。

C生物学的脱窒(嫌気ろ床槽)

 嫌気ろ床槽では槽内に酸素(O)がほとんどありません。嫌気ろ床槽に生息する脱窒菌は、亜硝酸性窒素(NO2-N)や硝酸性窒素(NO3-N)に含まれる酸素(O)を使って呼吸します。 これにより亜硝酸性窒素や硝酸性窒素から酸素が奪われて窒素(N)だけが残り、窒素ガス(N2)として大気中に放出されることによって、汚水中から窒素を除去します。

窒素・リン除去の仕組み

リン除去の仕組み(Z社の例)

鉄電極で除去(上記の図の楕円の中を参照してください)

 水に浸漬された2枚の鉄板間に直流電源を繋げると電流が流れます。すると+側すなわち陽極より2価の鉄イオン(Fe2+)が溶け出します。この2価の鉄イオンは、水中の溶存酸素(O2)により酸化されて、3価の鉄イオン(Fe3+)に変わります。
 次に、水中のリン酸イオン(PO43-)と反応してリン酸鉄(FePO4)の沈殿物となります。
Z社の高度処理型浄化槽では、担体流動生物ろ過槽に直接、鉄電極を浸漬し、鉄を溶出させています。溶出した鉄は、ばっ気ブロワから供給される酸素により3価の鉄イオンに変わり、リン酸イオンと反応してリン酸鉄となって、ろ過部において補足されます。次に1日一回行われる逆洗により嫌気ろ過槽に移送され、貯留されます。

鉄電極の交換

 鉄電極が摩耗すると、リン除去に必要な鉄溶解量が確保できずに、リン除去性能が低下します。また鉄電極が折れて担体流動槽に落下し、閉塞の原因となる可能性もあります。必ず4カ月に1回は交換する必要があります。 そして清掃時に汚泥として排出されることによりリンは除去されます。

高度処理型浄化槽への入浴剤の影響

 高度処理型浄化槽の中には鉄を使って汚水中のリンをリン酸鉄として、嫌気ろ床槽に貯留することによってリンの除去を行うものがあります。入浴剤の中には硫黄を含むものがありますが、硫黄は高濃度になるとリン酸鉄からリンを溶出させる作用があり、放流水中のリン濃度を高めることがあります。したがって硫黄を含む入浴剤は使用しないようにしてください。ただし硫黄を含まない入浴剤については問題ありません。
  ただし有色のもの、特に白濁液が混入しているものは、透視度(透明度)を低下させ、維持管理が行いにくくなる場合があります。また米ぬかが主成分の入浴剤、米のとぎ汁や日本酒を入浴剤として用いる場合は、浴槽中のBOD濃度が極端に高くなるので浄化槽の処理性能に悪影響を与える恐れがあります。

高度処理型浄化槽と水質検査

全窒素・全リン測定器 高度処理型浄化槽は、放流水の水質がBOD10mg/, COD20mg/とシビアな上、窒素・リンにもそれぞれ厳しい基準が設けられています。そのため水質検査にも十分な設備と技術が必要となります。 相模湖水質管理センターでは、高度処理型浄化槽の機能をより正確に検査するため、通常実施されている現場での簡易測定のほか、全窒素・全リン測定装置を導入し、検査室でより厳密な水質検査を行っております。

全窒素・全リンの測定

 全窒素・全リン測定器では水中の全窒素又は全リン濃度をペルオキソ2硫酸カリウム溶液を加えて、それぞれ120℃の温度で約30分間加熱分解します。放冷後、全窒素はpH調整して、紫外線(220nm)の波長で吸光度を測定し、全窒素濃度に演算してデジタル表示します。全リンは2種類の発色試薬を加えて可視光(660nm)の波長で吸光度を測定し、全リン濃度に演算してデジタル表示します。

簡易測定と全窒素・全リン測定の違い

 現場で行う簡易測定では、亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素、硝酸性窒素、リン酸イオンを別々に測定します。ただ簡易測定では不純物が含まれているため、正確な数値が把握できません。全窒素・全リン測定器では加熱処理を行い、不純物を分解したうえで全窒素、全リンをそれぞれトータルで測定します。
相模湖水質管理センターでは両方の検査を行っていますが、両者のデータが大きく異なることがあります。大切な税金を使う検査ですので、より正確なデータを把握し、異常があった場合は適切に対応すべきだと考えております。

 なお加熱処理には時間がかかるため、当社では加熱処理器を増設し、現在5台の機器で処理を行っています。 

簡易測定 全窒素・全リン測定
簡易測定装置
加熱器と全窒素・全リン測定器

※全窒素
 全窒素とは、水中に含まれるアンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素の無機性窒素及びタンパク質、アミノ酸、ポリヘプチド、尿酸等有機性窒素の総量を言います。窒素は湖沼などの富栄養化の原因物質で、水域領域ごとに全窒素の基準値が設定されています。 全窒素は、動物及び植物に由来しているので、全ての水に含まれていますが、生活排水、工場排水、畜産排水等の混入により増加します。
※全リン
 全リンとは、水中に含まれる無機及び有機リン化合物中のリンの総量です。リンは窒素とともに湖沼・ダム湖のプランクトンの成長を左右する要因です。一般的には窒素0.2mg/l 、リン0.02mg/lが水域の富栄養化の目安とされています。リンは酸素との親和力が大きいため、遊離状態で発見されることはなく、オルトリン酸塩として存在し分子中にリン酸イオンを含んでいます。

検査結果の管理

 相模湖水質管理センターでは、検査機による毎回の検査データを施設・世帯ごとに保管し、グラフで確認して浄化槽の異常の早期発見に努めております。数値が並んでいるだけでは発見できない異常の原因も、過去からの履歴をグラフで確認することで解明できることがあります。

水質検査結果の管理